仕事で使った通話料・通信料を自腹で払っている——これは我慢するしかないのでしょうか。

結論としては、会社に請求できる余地はあります。出発点になるのは就業規則や経費規程に「個人スマホの業務利用と費用負担」の定めがあるかどうかで、厚生労働省のガイドラインも、労働者に費用を負担させる定めを置くなら就業規則に規定が必要だとしています。この記事では、法律・公的ガイドラインが何と言っているかを整理したうえで、会社と話す前にやっておくことと、交渉と並行して今日から出費を止める方法までをまとめました。


個人スマホの業務利用は珍しくない。ただし「よくある=問題なし」ではない

「会社から携帯が支給されないせいで、毎月データ容量を追加購入するはめに…」
「せめて仕事で使った通話料・通信料くらいは会社に払ってほしい」

この記事にたどり着いた方は、こんな悩みを抱えているのではないでしょうか。

MMD研究所が20〜69歳の経営者・正規雇用者・公務員15,000人に行った「2026年4月法人向け携帯電話の利用実態調査」(2026年5月14日公表)によると、勤め先で利用している携帯電話は「会社から支給された社用携帯電話」が31.4%、「個人所有の携帯電話(私用の電話番号を利用)」が20.2%、「個人所有の携帯電話(会社用の電話番号を利用)」が5.8%でした(複数回答)。

会社規模で見ると、社用携帯を使えるのは大企業43.8%に対し中小企業は25.2%と18.6ポイントの差があります。逆に、個人所有の携帯を私用番号のまま業務に使っているのは大企業18.3%・中小企業24.4%で、中小企業のほうが「自分のスマホで何とかしている」割合が高いという構図です。

会社利用の携帯電話に関する調査結果(2022年・MMD研究所)

※上の図は2022年調査時点のものです。2022年の調査は「個人の携帯を仕事でも利用しているか」という別の聞き方だったため(大企業58.0%・中小企業62.2%)、上の2026年の数字と単純には比較できません。いずれにせよ、個人スマホの業務利用が一定数存在すること自体は変わっていません。

ここからわかるのは、「個人スマホの業務利用」自体は珍しくないということ。ただし「よくあること=適法・問題なし」ではありません。ポイントは費用の負担ルールが決められているかどうかです(後述します)。

会社から携帯を支給されず、高い通信費を負担している人の声も見てみましょう。

会社支給と個人スマホ、痛いのは「追加データ代が自分に来る」こと

一方で、「会社から携帯を支給されるのは嫌」という人もいます。

https://twitter.com/sakuradenbu_/status/1562443434484731904

仕事で利用する携帯電話への不満点(2022年・MMD研究所)

単純にどちらが良いとは言えないので、メリット・デメリットを整理してみます。

使い方メリットデメリット
個人のスマホを仕事でも使う1台持ちで済む/使い慣れている通話料・通信料が自己負担になりがち/仕事とプライベートの切り替えがしにくい/紛失・故障時のダメージが大きい
会社支給の携帯を使う通信費を個人で負担せずに済む/仕事と私用を分けられる/片方を失っても被害が半分で済む2台持ちが面倒/紛失・破損に気を使う

「会社の携帯だと休日も電話に出なければならない」という声もありますが、それは個人スマホでも同じです。むしろ個人スマホは、仕事で使った通話料・追加データ代がすべて自分に降りかかってくる点が大きな痛手です。お金を稼ぐために働いているのに、逆に持ち出しが増える——この矛盾こそ、多くの人がモヤモヤしている理由でしょう。

実例:携帯が支給されず、個人スマホで困ったこと

新卒で入社したAさんの会社では、一部の社員にしか携帯が支給されませんでした。営業職だったAさんは、自分のスマホを仕事でも使うことに。

入社前は月5GBで十分だったのに、常時飛び交うチャットや大量の業務メールを外出先で確認していたところ、2週間ほどで5GBを使い切って通信制限に。

先輩に同行中、「電車の乗り換えを調べて」と言われても通信制限で調べられない。訪問先の情報も検索できない。「すみません、通信制限で調べられません」と伝えると、盛大なため息が返ってきました。

さらに、外出先でテザリングして社内VPNに接続するよう指示されたことも。自腹のデータを消費するうえ、また制限がかかる——結局、自費で追加のデータ容量を購入して乗り切りました。

労働の対価として給料を受け取る関係のはずが、精神もお金も消耗する。せめて追加購入したデータ代くらいは会社に負担してほしい——そう思うのは自然なことです。

請求できるかの出発点は「就業規則にどう書かれているか」

「会社が費用を負担すべきか」は、労使の取り決め(就業規則など)がどうなっているかが出発点になります。

①労働者に費用を負担させるなら、就業規則への規定が必要

厚生労働省のテレワークガイドラインでは、労働者に情報通信機器・作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、その事項を就業規則に規定しなければならない(労働基準法第89条第5号)と説明されています。

つまり、「個人のスマホを業務に使わせ、その費用を従業員に負担させる」なら、会社は就業規則等でルールを定めておく必要があるということです。

②負担のルールは、あらかじめ労使で話し合っておくのが望ましい

同ガイドラインは、在宅勤務などで通話料・インターネット利用料といった通信費が増える場合、どちらがどのように負担するのか、会社が負担する場合の限度額、労働者が請求する場合の請求方法などを、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等に定めておくことが望ましいとしています。

厚労省のテレワーク総合ポータルでも、「テレワークに関わる費用について、労働者に過度な負担が生じることは望ましくない」と明記されています(費用負担に関するQ&A)。

③「按分して精算する」やり方は国税庁が示している

会社側が渋る理由として多いのが、「仕事とプライベートが混ざっているから、いくら払えばいいか決められない」というものです。ここは反論の材料があります。

国税庁は「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」で、会社が従業員に通信費を支給する場合について、基本使用料や通信料のうち業務のために使用した部分を合理的に計算する方法(勤務日数などで按分する算式)を示しています。つまり「全額か、ゼロか」の二択ではなく、按分して精算するという実務上の答えは公的にも用意されているということです。

会社と話すときは、この「按分して精算する」という落としどころを先に示すと、話が前に進みやすくなります。

④実際に請求が認められるかは個別判断

法律相談サイト弁護士ドットコムに寄せられた類似の相談(「個人の携帯電話。10年間の使用料を請求出来ますか?」/「個人所有携帯電話での業務使用の強要」)では、弁護士から次のような考え方が示されています。

  • 会社が個人所有の携帯を業務に使わせるには、就業規則などの根拠が必要
  • 本来会社が負担すべき費用を従業員に負担させている場合、返還を請求できる余地がある
  • 業務に必要な経費を立て替えた形なら、会社に立替金として請求しうる

※ただし、実際に請求が認められるかは契約内容・業務実態・立証できる資料によって変わります。本記事は法律相談ではありませんので、金額が大きい場合や交渉がこじれた場合は、労働基準監督署や弁護士など専門家にご相談ください。

会社に通信費を請求できるか考えるイメージ

ネット回線の先生ネット回線の先生

大事なのは「制度としてどうなっているか」です。就業規則や経費規程に個人スマホの業務利用と費用負担の定めがあるか、まず確認してみましょう。定めがないのに費用だけ押し付けられているなら、交渉の余地は十分あります。

交渉する前にやっておく4ステップ

いきなり「法律ではこうです!」と切り出しても、「みんな我慢してる」とかわされてしまうのが現実です。順番に足場を固めましょう。

ステップやることポイント
1. 制度を確認就業規則・経費規程・テレワーク規程を読む個人スマホの業務利用と費用負担の記載があるかを確認。記載がなければ交渉材料になる
2. 記録を残す通信料の請求書・利用明細を保存する業務利用の割合がわかる資料(通話履歴・追加データ購入履歴)が証拠になる
3. 精算方法を用意する「業務利用分を按分して精算」という案を持っていく国税庁FAQの按分の考え方を下敷きにすると、会社側も検討しやすい
4. 相談するまずは上長・総務・人事へ打診。難しければ労働基準監督署・弁護士へ感情論ではなく「業務に必要な費用の精算」として持ちかけるのがコツ

【現実的な自衛策】自腹の追加データ代をゼロにする

交渉には時間がかかりますし、立場的に言い出しにくいこともあります。「今月もまた通信制限…」という消耗をすぐ止めたいなら、データ容量無制限のWiFi(WiMAX)を1台持つのが現実的な解決策です。

スマホのテザリングに頼らずWiFiルーター側の回線を使えば、スマホの契約データを消費せずに済み、追加購入のムダな出費がなくなります。そもそもポケット型WiFiが自分に向いているかはポケットWiFiのメリット・デメリット|料金と速度制限を初心者向けに解説で確認してから決めるとよいでしょう。回線タイプの選び方はポケット型WiFiおすすめ比較にまとめています。

Broad WiMAXの料金は「初月」と「1ヵ月目以降」で別物

Broad WiMAXのイメージ

WiMAXを扱うプロバイダのひとつがBroad WiMAXです。公式サイトの表記を整理すると次のようになります(2026年9月時点・税込)。

項目内容(税込)
プランギガ放題スタートプラン(データ無制限/最低利用期間なし)
初月880円
1ヵ月目以降の月額4,785円
端末代990円×36回。同額の「スタート長期割」−990円×36回で実質無料
契約事務手数料3,300円
初期費用20,743円 → Web申込+クレジットカード払い+指定オプション2つ(安心サポートワイド・My Broadサポート)への初回加入で無料(オプションは加入後いつでも解約可)
契約解除手数料無料
プラスエリアモード利用した月のみ1,100円
スマホセット割UQ mobile「自宅セット割 インターネットコース」で、対象プランは毎月1,100円割引(くりこしプラン+5G S/Mは638円、Lは858円)。適用中はプラスエリアモードが無料

※Broad WiMAXは公式サイトで「2026年10月1日より月額料金を改定する」と告知しています。申し込みを検討している方は、改定後の金額を必ず公式サイトで確認してから判断してください。

5G対応エリア外でも、従来のWiMAX 2+/au 4G LTEにつながるため、面倒な設定なしでそのまま使えます。仕事のチャット・メール・地図・テザリングを気兼ねなく使えるのは、思っている以上に精神衛生にいいものです。

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よくある質問

Q. 個人スマホの業務利用を断ることはできますか?

A. 就業規則や労働契約に個人スマホの業務利用に関する定めがない場合、断る余地はあります。まずは規程を確認し、会社に「業務用の端末または費用負担をお願いしたい」と申し出るのが現実的です。判断に迷う場合は専門家にご相談ください。

Q. 会社に「通信費は給料に含まれている」と言われました。

A. 費用負担のルールは、あらかじめ労使で話し合い、就業規則等に定めておくことが望ましいとされています(厚労省テレワークガイドライン)。まずは規程にどう書かれているかを確認し、記載がなければ「どこにも定めがないので精算方法を決めたい」と切り出すのが筋です。

Q. 仕事とプライベートが混ざっていても精算できますか?

A. 国税庁のFAQが、通信費のうち業務のために使用した部分を勤務日数などで按分して計算する方法を示しています。「全額かゼロか」ではなく按分で精算するという前提で相談すると、会社側も検討しやすくなります。

Q. 過去にさかのぼって請求できますか?

A. 認められるかは契約内容・業務実態・残っている資料によって変わります。請求書や通話明細、追加データ購入の履歴が手元にあるかが分かれ目になるので、まずは取り寄せられる範囲で保存してください。金額が大きい場合は弁護士にご相談を。

Q. 通信制限を今すぐ何とかしたいです。

A. 会社との交渉と並行して、データ無制限のWiFiルーターを用意するのが即効性のある対処です。スマホの契約容量を業務で削られなくなり、私用の通信も守れます。

まとめ

  • 2026年4月の調査では、社用携帯を使えているのは31.4%(大企業43.8%・中小企業25.2%)。個人スマホでしのいでいる人は今も一定数いる
  • 労働者に費用を負担させる定めをするなら、就業規則への規定が必要(労基法89条5号・厚労省ガイドライン)
  • 費用負担・請求方法はあらかじめ労使で話し合い、規程に定めておくことが望ましいとされている
  • 按分して精算するという考え方は国税庁のFAQが示している。交渉ではこれを落としどころに
  • 交渉するなら請求書・利用明細を保存し、経費精算として持ちかける。難しければ労基署・弁護士へ
  • 目先の出費を止めるなら、データ無制限のWiFiを1台持つのが現実的な自衛策

※本記事の料金・キャンペーン内容・調査結果は2026年9月時点で各公式サイトを確認したものです。内容は変更されることがあるため、申し込み前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

会社への不満はすぐには解消できなくても、「毎月の通信制限と追加課金」というストレスは今日から減らせます。できるところから手を打っていきましょう。