フリーWiFi(公衆無線LAN)につないだ端末が、持ち主の知らないうちに「仮想通貨のマイニング(採掘)」に使われてしまうことがあります。クリプトジャッキングと呼ばれる手口です。お金を盗まれるわけではありませんが、CPUを回され続けるぶん端末が熱を持ち、バッテリーの劣化が進みます。
「心当たりがないのにスマホが熱い」「充電の減りが急に早くなった」——そんなときに疑う候補のひとつがこれです。ここでは、フリーWiFiに潜むリスクとクリプトジャッキングの現在地を整理し、総務省が公開している公衆Wi-Fi利用者向けの対策にそって、今日からできる備えをまとめます(2026年9月時点の情報です)。
クリプトジャッキング=端末のCPUを無断で借りて採掘させる手口
フリーWiFiの脅威といえば「情報の抜き取り」が中心でしたが、仮想通貨が注目されるようになってから、他人の端末の処理能力(CPU)を無断で使ってマイニングを行う手口が広がりました。これがクリプトジャッキングです。
そもそもマイニングとは、ビットコインなどの取引を検証し、新しいブロックをブロックチェーンに追加する作業のことで、成功したマイナー(採掘者)が報酬を受け取れます。ただしビットコインのマイニング報酬は約4年ごとの「半減期」で減っていき、2024年4月20日の4回目の半減期以降は1ブロックあたり3.125BTCになっています。採掘には膨大な電力と専用の高性能マシンが必要で、いまや個人が普通のパソコンやスマホで採掘して利益を出すのは非現実的です。だからこそ、悪意ある人物は「他人の端末を無断で使う」方向に走るわけですね。
いまは「サイトを開くだけ」より「アプリを入れさせる」手口が中心
数年前に話題になったのは、あるWebサイトを訪れると、そこに仕込まれたスクリプトによって閲覧者のCPUが勝手にマイニングに使われる「ブラウザ(Webサイト)型」でした。代表的だったマイニングスクリプト「Coinhive(コインハイブ)」は2019年3月にサービスを終了し、ブラウザ型はかつてより下火になっています。
ただし、クリプトジャッキングそのものが無くなったわけではありません。現在は、不正なアプリやマルウェアを端末にインストールさせてバックグラウンドで採掘させる手口などに形を変えて残っています。フリーWiFi経由で不正なページへ誘導し、そこからアプリを入れさせる、という組み合わせも考えられます。「昔のニュースだから安心」ではなく、いまも仕組みを知って備えておくことが大切です。
気づくきっかけは、発熱とバッテリーの減り方
クリプトジャッキングで困るのは「他人の金儲けに付き合わされること」だけではありません。マイニングはCPUをフルに使い続けるため、端末が発熱し、バッテリーに負担がかかります。スマホに使われているリチウムイオン電池は、過度な発熱や劣化が進むと、まれに膨張・発火といったトラブルにつながることもあります。
ですから、心当たりがないのにスマホが妙に熱い・バッテリーの減りが急に早い・操作していないのに動作が重いといった症状が続くときは、不正なアプリやマイニングを疑ってみましょう。直前に入れたアプリを消す、セキュリティアプリでスキャンする——この2つから試すのが手っ取り早い切り分けです。
そもそもフリーWiFiでは何が起きるのか
フリーWiFiは便利ですが、使い方を間違えると情報が漏れるリスクがあります。代表的なのが、端末とアクセスポイントの間の通信に第三者が割り込む「MITM攻撃(中間者攻撃)」です。暗号化されていない通信では、見ているサイトの内容や入力した情報が盗み見られるおそれがあります。
いちばん怖いのは、偽のアクセスポイントに自分からつないでしまうこと
総務省も、悪意のある第三者が正規のアクセスポイントになりすました不正なアクセスポイントを設置し、接続してきた利用者の通信内容を傍受するおそれを挙げています。店名によく似た名前のアクセスポイントが並んでいても、見た目だけでは区別がつきません。
やっかいなのは、スマホの自動接続設定によって、利用者が気づかないうちに携帯回線からWi-Fiへ切り替わっている場合があることです。「自分でつないだ覚えがないから大丈夫」とは言い切れません。使わないときはWi-Fiをオフにしておく、自動接続の設定を見直しておく、という基本がここで効いてきます。
総務省がまとめている、公衆Wi-Fi利用者向けの3つのポイント
総務省は「公衆Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(令和7年2月版・PDF)を公開しており、利用者がやるべきことを3点に絞って示しています。難しいことは書かれていません。
| ポイント | 具体的にやること | ねらい |
|---|---|---|
| 接続するアクセスポイントをよく確認する | 店内の掲示や公式サイトでネットワーク名(SSID)を確かめてから選ぶ | 偽アクセスポイントにつながないため |
| 正しいURLでHTTPS通信しているか確認する | アドレスが「https://」で始まり、鍵マークが付いているかを見る | 通信内容を盗み見られないため |
| パソコンの共有設定に注意する | ファイル共有・ネットワーク探索をオフにしてから接続する | 同じ回線上の他人に中を覗かれないため |
とくに1つめが効きます。ネットワーク名は「それらしく」いくらでも付けられるので、店員さんに聞く・レシートや掲示を見る、という一手間が最大の防御になります。SNSのログイン情報やクレジットカード番号の入力は、そもそもフリーWiFiでは避けるのが無難です。
より詳しい解説は総務省「無線LAN(Wi-Fi)の安全な利用(セキュリティ確保)について」にまとまっています。
端末側でやっておきたい4つの備え
基本的な対策を押さえておけば、過度に怖がる必要はありません。次のポイントを意識しましょう。
- 不要なときはWiFiをオフに:外出先で自動的に不明なフリーWiFiへつながらないよう、使わないときはWiFi接続を切っておく。過去につないだネットワークの自動接続設定も見直しておくと安心です。
- OS・アプリを最新に:端末のアップデートを適用し、公式ストア以外からアプリを入れない。クリプトジャッキングの現在の主流が不正アプリ経由である以上、ここがいちばん効きます。
- セキュリティアプリを活用:不正なマイニングスクリプトやマルウェアの検知に役立ちます。
- 自分専用の回線を用意する:フリーWiFiに頼らず、モバイルルーター(ポケット型WiFi)を持ち歩けば、そもそも見知らぬアクセスポイントにつなぐ必要がなくなります。
ポケット型WiFiを選ぶなら、対応エリアが広く定番のWiMAX(現行はWiMAX +5G)が候補になります。契約する場合は、必ず端末側にもパスワードを設定し、他人に勝手に使われないようにしておきましょう。お得な使い方は以下の記事も参考にしてください。
自宅のWi-Fiルーターも一度点検しておく
ここまでは外出先の話ですが、同じ総務省のページでは「自宅Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(令和7年2月版・PDF)も公開されており、家庭側の対策は5点にまとめられています。
- セキュリティ規格は「WPA2またはWPA3」を選ぶ
- パスワードは第三者に推測されにくいものにする
- サポート期間内のWi-Fiルーターを使う
- ファームウェアを最新の状態にする
- Wi-Fiルーターの設定を定期的に確認する
見落とされがちなのが3つめです。メーカーのサポートが終わったルーターは、脆弱性が見つかっても修正プログラムが出ません。何年も同じ機種を使っているなら、一度メーカーのサイトでサポート状況を調べてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 自分のスマホがマイニングに使われているか確認できますか?
A. 完全な断定は難しいですが、「充電していないのに本体が熱い」「バッテリーの減りが急に早くなった」「操作していないのに動作が重い・ファンが回る」といった症状はサインになり得ます。心当たりのない発熱が続く場合は、身に覚えのないアプリを削除し、セキュリティアプリでスキャンしましょう。
Q. ブラウザで少しWebを見ただけでもマイニングされますか?
A. 代表的だったブラウザ型スクリプト「Coinhive」は2019年に終了しており、ページを開いただけで採掘される事例はかつてより減っています。とはいえゼロではないため、怪しいサイトを長時間開きっぱなしにしない、セキュリティ対策を入れておく、といった基本対策は有効です。
Q. 店の名前が付いたフリーWiFiなら安全ですか?
A. 名前だけでは判断できません。ネットワーク名(SSID)は誰でも自由に設定できるため、店名によく似た偽のアクセスポイントを並べることも可能だからです。総務省も接続先の確認を第一のポイントに挙げています。店内の掲示や公式サイトで正しい名称を確かめてから接続してください。
Q. マイニングでスマホが本当に爆発することはある?
A. 「必ず爆発する」わけではありません。ただし継続的な高負荷は発熱・バッテリー劣化の原因になり、劣化したリチウムイオン電池が膨張・発火するリスクは一般的に存在します。異常な発熱・膨らみを感じたら使用を中止し、電源を切って、メーカーやショップに相談してください。
まとめ
フリーWiFiは、情報の盗み見(MITM攻撃)だけでなく、端末を勝手にマイニングに使うクリプトジャッキングのきっかけになることもあります。ブラウザ型の代表格Coinhiveは2019年に終了しましたが、手口は不正アプリ経由などに形を変えて残っています。
やることはシンプルです。接続先のアクセスポイントを確かめる・HTTPSかどうかを見る・共有設定を切るという総務省の3ポイントに、使わないときはWi-Fiをオフにする・公式ストア以外からアプリを入れない・自分専用の回線を持つを足しておけば、日常的な使い方で困ることはまずありません。
フリーWiFiそのもののリスクはフリーWi-Fiの危険性と安全な使い方で、屋外の大規模施設での注意点は競馬場のフリーWi-Fiは危険?接続方法と安全に使うための対策で詳しく扱っています。もし身に覚えのない発熱や異臭を感じたら、すぐに電源を切って安全な場所に置き、早めに専門ショップに相談してください。最新の対策は総務省など公的機関の案内もあわせてご確認ください。
