「かけた覚えのない国際電話」で高額請求が届く

固定電話に代わって広く使われている「IP電話」。インターネット回線を使うぶん通話料が安く、NTT東日本・西日本の「ひかり電話」もその一種です。

便利な一方で、第三者に機器を乗っ取られ、勝手に国際電話をかけられるという被害が、いまも続いています。気づくきっかけは、たいてい身に覚えのない高額な通話料の請求です。

この記事では、乗っ取りが起きる仕組みと、家庭や小さな事務所で今日からできる対策、そして実際に高額請求が届いてしまったときの動き方を整理します。



IP電話とは?ひかり電話との関係

「IP」とは、インターネットプロトコル(Internet Protocol)という通信方式の頭文字を取ったものです。
つまりIP電話とは、インターネット接続を利用した電話サービス全般のことを指します。

固定電話のように電話番号を取得でき、インターネット回線を引いていれば固定電話より安く電話をかけられるのが最大の利点です。

このIP電話と混同されやすいのが、NTT東日本・西日本の「ひかり電話」です。実はひかり電話もIP電話の一種で、基本的な仕組みは同じです。違うのは使っている回線で、かつてのIP電話はADSL回線でも利用されていましたが、ADSLは「フレッツ・ADSL」が2025年1月31日をもって全面的に終了し、「Yahoo! BB ADSL」も2024年3月末で終了しました。現在は光回線を使うひかり電話が主流です。

言い換えると、いまひかり電話を使っている人は、かつてIP電話が抱えていたリスクをそのまま引き継いでいるということになります。

乗っ取りは「2015年の事件」で終わっていない

IP電話の乗っ取りが大きく報じられたのは2015年でした。IP回線につながる機器に何者かが不正アクセスし、遠隔操作で国際電話を大量に発信させるという手口で、1件で200万円を超える請求が発生したケースもあり、当時はセキュリティ管理の甘さが問題視されました。

ただし、これは過去の話ではありません。NTTドコモビジネスは2025年9月9日にも「第三者による国際電話の不正利用について」の注意喚起(更新版)を公開しており、同種の被害がいまも発生していることを案内しています。総務省も電気通信事業者団体に対策を要請しており、通信業界全体で対応が続いている問題です。

狙われやすいのは「人がいない時間帯」

NTTドコモビジネスの注意喚起によれば、企業ではオフィスが無人になる土日・祝日や連休、深夜から早朝に被害に遭う傾向があるとされています。

誰も電話機を見ていない時間に、機械的に大量の国際通話が発信されるため、月曜の朝に出社して初めて気づく、というケースが起こり得ます。1〜2日でも被害額は大きく膨らみます。

侵入経路は大きく3つ

同社が「不正利用が確認されたケース」として挙げているのは、次の3つです。

  • PBX(構内交換機)の機能が悪用される…外出先から社内に電話をかけて遠隔操作するDISA機能、リモート保守、転送機能などが狙われます
  • IP-PBXへインターネット経由で不正アクセスされる…セキュリティ対策が不十分な場合に外部から入られます
  • IP電話接続機器のIDやパスワードを盗まれる…盗んだ情報で正規の利用者になりすまして発信されます

PBXは会社の設備なので家庭には関係がないと思われがちですが、3つめの「IDとパスワードを盗まれる」は家庭でも起こり得ます。ルーターや接続機器の管理パスワードが初期設定のままだと、そこが入口になります。

いちばん確実な対策は「国際電話を使えない状態にしておく」

対策はいくつもありますが、国際電話をまったく使わない家庭・事務所にとって最も効果が大きいのは、国際電話そのものを休止しておくことです。発信できなければ、機器に侵入されても高額な通話料は発生しません。

固定電話は「国際電話不取扱受付センター」でまとめて申し込める

固定電話で国際電話を利用しない場合の休止申し込みは、国際電話不取扱受付センターが受け付けています。ここはNTT東日本・NTT西日本・NTTドコモビジネス・KDDI・ソフトバンクの5社が共同で運営している窓口です。

  • 電話:0120-210-364(平日9時〜17時/通話料無料)
  • FAX:0120-210-535
  • Web:https://www.kokusai-teishi.com/Web申し込みにはパスワードが必要なので、まず上記の電話番号で確認します)

NTT東日本・西日本は2025年6月24日から発信・着信をまとめて受付

以前は、発信の休止はNTT東西へ、着信の休止は国際電話不取扱受付センターへと、2か所に連絡する必要がありました。

NTT東日本・西日本は2025年6月10日の発表で、2025年6月24日から発信・着信双方の利用休止を自社で一元的に受け付ける運用を始めています。ひかり電話の国際発着信規制は、NTT東日本のWebフォームからも申し込めます。

窓口連絡先できること
国際電話不取扱受付センター
(5社共同運営)
0120-210-364
平日9時〜17時・通話料無料
固定電話の国際電話(発信または発着信)の利用休止の受付
NTT東日本
特殊詐欺・迷惑電話対策センタ
0120-325-263
9時〜17時(土日祝・年末年始を除く)
国際電話の利用休止の申し込み・相談(2025年6月24日から発信・着信を一元受付)
NTT西日本
特殊詐欺対策サポート窓口
0120-931-965
9時〜17時(土日祝・年末年始を除く)
同上

費用については、NTTドコモビジネスが自社のIP電話サービスの「国際電話利用休止」を無料の付加サービスとして案内しています。契約している事業者やサービスによって扱いが異なる場合があるため、申し込み前に契約中の事業者の公式サイトで確認してください。

なお、国際電話を使う機会がある場合でも、機器の設定で「かけることのない国・地域への発信だけを止める」という方法があります。これはNTTドコモビジネスも推奨している対策です。

機器側で見直しておきたい4つの設定

1. 管理パスワードを初期設定から変える

電話機とインターネット回線をつないでいる接続機器(ルーターなど)のパスワードが初期設定のままというケースは、いまも珍しくありません。短く単純なパスワードは、外部からの不正アクセスを容易にしてしまいます。

推測されやすい管理パスワードには、たとえば次のようなものがあります。

  • 文字数が少ない、数字・アルファベットのみ(1234、abc123 など)
  • 同じ文字が連続している(1111、aaaa など)
  • 誰でも思いつく簡単な英単語のみ(password、network など)
  • 誕生日や名前など、個人情報が含まれるもの

大文字・小文字・数字(できれば記号も)を織り交ぜ、他のサービスと使い回さないことが基本です。変更後のIDとパスワードは、機器が使えなくなったときに困らないよう、手帳などアナログの媒体にも控えておくと安心です。

2. ファームウェアを最新の状態に保つ

ルーターやPBXは、最新版のファームウェアへアップデートすることで既知の弱点がふさがれます。アップデート方法は製品ごとに異なるので、メーカーのサイトで手順を確認してから実施してください。

3. 外部からの接続(リモート管理)を切る

機器の設定画面にインターネット側からログインできる状態になっていないかを確認します。使っていないなら無効にしておくのが安全です。NTTドコモビジネスも「不要に外部から接続ができる設定になっていないか確認し、不要な接続環境は削除する」ことを対策に挙げています。

4. アクセスログを残し、ときどき確認する

機器にアクセスログを記録・保存する設定があれば有効にしておきます。身に覚えのない時間帯のアクセスが残っていないかを見るだけでも、異変に早く気づけます。

気づくきっかけは明細。月1回のチェックを習慣に

不正アクセスは利用者に気づかれないように行われます。そのため、被害の発見が遅れ、繰り返し使われてしまうのが厄介な点です。

これを防ぐいちばん現実的な方法が、毎月の利用明細を確認する習慣です。見覚えのない通話や、いつもと桁の違う通話料が並んでいたら、すぐ契約している電話会社へ連絡してください。

通信事業者側にも防御はあります。NTTドコモビジネスは、不正利用の被害に遭っていると判断した場合に利用状況を確認したり、国際電話の利用を一時的に停止したりすることがあると案内しています。ただし、これは事業者側が異常を検知できた場合の措置です。「気づいてもらえるはず」と考えず、自分でも明細を見るのが確実です。

高額請求が届いてしまったときの動き方

まず落ち着いて、契約している電話会社へ「身に覚えのない国際通話がある」と連絡します。不正利用にあたるかどうかの確認が行われ、回答までに数日かかることもあります。

過去の事例では、請求を受けた利用者が全額を支払ったケースもあれば、不正利用と確認されて個別に対応が行われたケースもあります。支払い義務の有無は状況によって判断が分かれるため、ここで断定はできません。事業者との話し合いが前提になります。

このとき論点になりやすいのが、「IDやパスワードが不正利用されやすい状態だったか」という利用者側の管理責任です。逆に、機器の脆弱性や周知の不足について事業者側の責任が問われることもあります。

不正利用と判明した場合は警察にも届け出ましょう。事業者とのやり取りで納得できないときは、消費者ホットライン「188(いやや)」で最寄りの消費生活センターに相談できます。

公衆Wi-Fiでの情報漏えいにも注意

乗っ取りの入口になり得るのが、IDやパスワードの漏えいです。ホテルや空港、街中の無料Wi-Fiスポットは、その入口になりやすい場所とされています。

暗号化されていないWi-Fiは、鍵のかかっていない玄関のようなものです。通信内容を第三者に見られるおそれがあるため、接続前に暗号化(WPA2/WPA3など)の有無を確認しましょう。

さらに悪質なケースでは、本物そっくりの偽アクセスポイントを立ち上げ、そこに接続した人のアカウント名とパスワードを盗み取る手口もあります。暗号化されているように見えても安全とは限りません。

外出先で機器の管理画面にログインするような操作は避け、必要な場合はVPN(通信を暗号化する仕組み)を使うなどの備えをしておくと安心です。

光回線のセキュリティ関係の口コミ

https://twitter.com/arcykhr/status/1108004280194097152

https://twitter.com/shions99_trainz/status/1305416487067246593

IP電話の乗っ取りについて、よくいただく質問

Q. 会社ではなく家庭のひかり電話でも、乗っ取られることはありますか?

PBXを狙う手口は主に企業向けですが、接続機器のIDやパスワードを盗んで発信する手口は家庭でも起こり得ます。国際電話を使わないご家庭なら、利用休止の申し込みが最も確実な備えになります。

Q. 国際電話を休止すると、海外からかかってくる電話も受けられなくなりますか?

休止には「発信のみ」と「発着信」の両方の申し込み方があります。海外の家族や取引先からの着信を受けたい場合は、発信だけを止める形を選べます。どちらにするかは申し込み時に伝えてください。

Q. いったん休止したあと、また国際電話を使いたくなったら戻せますか?

解除の手続きは可能ですが、手順や所要日数は契約している事業者によって異なります。渡航や取引の予定が決まっている場合は、早めに事業者へ確認しておきましょう。

Q. 見慣れない国番号から着信があります。これも乗っ取りですか?

それは「かかってくる」側の問題で、乗っ取り(勝手にかけられる)とは別の話です。国際電話を装った特殊詐欺の可能性があるため、心当たりのない番号にはかけ直さないでください。着信そのものを止めたい場合は、国際着信の規制を申し込めます。

Q. スマートフォンの国際電話も、同じ窓口で止められますか?

国際電話不取扱受付センターが受け付けているのは固定電話の国際電話利用休止です。携帯電話については、契約している携帯会社の窓口で相談してください。

まとめ

IP電話・ひかり電話の乗っ取りは、2015年に大きく報じられた出来事ですが、2025年になっても注意喚起が更新され続けている、現在進行形のリスクです。

とはいえ、利用者側でできることははっきりしています。

  • 国際電話を使わないなら、利用休止を申し込む(発信できなければ被害は起きません)
  • ルーターなど接続機器の管理パスワードを初期設定から変える
  • ファームウェアを最新に保ち、不要な外部接続は切る
  • 毎月の利用明細に目を通す

とくに最初のひとつは、電話1本で申し込めて効果も大きい対策です。国際電話を使う予定がないご家庭は、この機会に検討してみてください。

※各窓口の受付時間や手続きの詳細は変わることがあります。最新の内容は、契約している通信事業者の公式サイトでご確認ください。