置き場所を見直すだけで、Wi-Fiは本当に変わる

「新しいルーターに買い替えたのに、思ったほど速くならない」——そんなときに真っ先に疑ってほしいのが設置場所です。

Wi-Fiの電波は目に見えませんが、まわりの物や建材の影響をはっきり受けます。ルーター自体は十分な性能を持っているのに、置いてある場所のせいで力を出しきれていない、というケースは本当に多いのです。

この記事では、電波が弱くなる理由を「遮る・吸収する・反射する・干渉する」の4つに分けて整理したうえで、置き場所を決める具体的な条件、アンテナの向きの考え方、そして周波数帯ごとの違いと法令上の注意まで、順番に確認していきます。


電波を弱らせる4つの働き

「壁があると弱くなる」というのは多くの人が知っていますが、実際にはもう少し種類があります。原因が分かれば、自分の家のどこがまずいのかを見つけやすくなります。

① 遮る:壁・扉・そして棚の中

いちばん分かりやすいのが、物理的に間に入るものです。壁、ドア、家具。ルーターと端末のあいだにある障害物が多いほど、電波は弱くなります

意外な盲点が「棚や収納の中にしまう」こと。見た目がすっきりするので入れたくなりますが、四方を囲まれた状態は電波にとって最悪です。扉付きの収納に入れるのはやめましょう

② 吸収する:水・土壁・本

電波には水に吸収されやすい性質があります。水槽や花瓶の近くにルーターを置くと、その方向へ飛んだ電波が水に吸われてしまいます。

同じ理由で、水分を含みやすい土壁や、紙が詰まった本棚も電波を通しにくくなります。壁一面が本棚の部屋で「隣の部屋に届かない」というときは、この可能性を疑ってみてください。

③ 反射する:金属・鏡

金属は電波を反射します。スチールラックの中や金属製のデスクの下にルーターを置くと、電波が思わぬ方向に跳ね返り、届かせたい場所に届かなくなります。大きな鏡も同様で、通信が不安定になる原因になります。

「吸収」と「反射」は現象としては別物ですが、使う側から見れば「その方向に電波が飛ばなくなる」という点で同じです。とにかく、金属・水・鏡のそばは避ける、と覚えておけば十分です。

④ 干渉する:電子レンジと、同じ帯域を使う機器

電子レンジは2.4GHz帯の電波を出します。Wi-Fiの2.4GHz帯とまさに同じ帯域なので、レンジを回している間だけ通信が不安定になるということが起こります。

同じ2.4GHz帯を使う機器はほかにもあります。Bluetoothの機器、コードレス電話、一部のワイヤレスマウスなどです。ルーターをこれらの機器から離すか、後述するように5GHz帯に切り替えるのが対処法になります。

近くにあるもの何が起きるかどうする
扉付きの棚・収納四方を囲まれて電波が出ていかない外に出して置く
水槽・花瓶水に吸収される離す(数十cmでも変わる)
土壁・本棚水分・紙に吸収されるその方向に届かせない配置にする
金属ラック・鏡反射して向きが変わる金属の中に入れない
電子レンジ・Bluetooth機器2.4GHz帯で干渉する離す/5GHz帯を使う
床への直置き下方向の電波が使えない台の上に置く

置き場所を決める3つの条件

避けるものが分かったら、次は「どこに置くか」です。判断の軸は3つだけです。

条件①:家の中心寄りに置く

電波はルーターを中心にほぼ全方向へ広がります。ということは、部屋の隅に置くと電波の半分近くが壁の外へ出ていってしまう計算になります。

できるだけ家の中心に近い場所へ。窓際は開放的で良さそうに見えますが、外へ向かった電波は帰ってきません。よく使う部屋の近く、かつ家全体の中心寄り、というバランスで探しましょう。

条件②:床から1〜2mの高さに置く

床に直置きすると、下方向へ出た電波が床に遮られて無駄になります。棚やラックの上など、床から1〜2メートルほどの高さに置くのが基本です。

高い位置は、2階へ電波を届けたいときにも効いてきます。「中心」と「高さ」はセットで考えると失敗しません。

条件③:まわりを空ける

ルーターの周囲30cmくらいには、できるだけ物を置かないようにします。放熱の面でも、周りが詰まっていると本体が熱を持ち、動作が不安定になることがあります。

ネット回線の先生ネット回線の先生

「部屋の中心・胸から目の高さ・まわりに物がない」——この3つを満たす場所を探す、と覚えておくと迷いません。

2階建て・3階建てのとき

複数階の住宅では、使う階の「真ん中の階」に置くのが効率的です。3階建てなら1階ではなく2階。上下方向にも電波は飛ぶので、真ん中に置けば1階からも3階からも届きやすくなります。

とはいえ、回線の引き込み口が1階にあるなど、置き場所を自由に選べないことも多いはずです。その場合は次の章のアンテナ調整を試し、それでも足りなければ後述の中継機・メッシュWi-Fiを検討します。

アンテナの向きは「軸に対して垂直に飛ぶ」で考える

外付けアンテナが付いているルーターなら、向きを変えるだけで届き方が変わります

覚えておきたいのは、電波はアンテナの軸に対して垂直な方向へ強く飛び、アンテナの真上・真先の方向へは飛びにくいということです。

これを踏まえると——

  • 同じ階に広く届かせたい:アンテナを垂直に立てる(電波は横方向=床と平行に広がる)
  • 上下の階に届かせたい:アンテナを横に倒す(電波は縦方向=天井と床へ向かう)

「2階に届かせたいから、2階に向けてアンテナをまっすぐ立てる」というのは、実は逆効果になりがちです。アンテナは”指し示す”ものではなく、”軸の横に広げる”ものだと理解してください。

アンテナが複数本あるルーターでは、すべて同じ向きにそろえるより、向きを変えて組み合わせたほうが安定することが多いとされています。ただし最適な角度は間取りや建材によって変わるため、実際にスマホの電波表示や速度計測を見ながら、少しずつ角度を変えて確かめるのがいちばん確実です。内蔵アンテナの機種では角度を変えられないので、本体の向き自体を回してみましょう。

2.4GHz・5GHz・6GHz|どの電波を使うかで届き方が変わる

いまのルーターは複数の周波数帯を同時に出しています。置き場所と同じくらい、「どの帯域につなぐか」が効きます。

周波数帯特徴向いている場面
2.4GHz帯遠くまで届き、障害物に強い。ただし電子レンジなどと干渉しやすいルーターから離れた部屋・壁をまたぐとき
5GHz帯干渉が少なく速いが、障害物に弱いルーターと同じ部屋・近い距離
6GHz帯(Wi-Fi 6E/7)混雑が少なく広い帯域を使える。届く距離は短い対応機器があり、ルーターの近くで使うとき

「速いほうがいい」と5GHz帯に固定しがちですが、壁をまたぐ場所では2.4GHz帯のほうが快適ということはよくあります。スマホ側で両方につないでみて、実際に速い方を選ぶのが正解です。

5GHz帯には、屋外で使えない周波数がある

あまり知られていませんが、これは法令で決まっている話です。総務省の電波利用ポータルによると、無線LANの利用可能な場所は周波数帯ごとに次のように定められています。

  • 2.4GHz帯:屋内・屋外とも利用可
  • 5.2GHz帯(5150〜5250MHz):屋内は可。屋外は条件付き(家庭用の機器では原則不可)
  • 5.3GHz帯(5250〜5350MHz):屋内のみ。屋外での利用は不可
  • 5.6GHz帯(5470〜5730MHz):屋内・屋外とも利用可
  • 6GHz帯(5925〜6425MHz):2022年9月から利用可能。屋外は低出力のVLP(EIRP25mW以下)に限る

つまり、ベランダや庭で使うつもりでルーターを窓の外に向ける、といった使い方には制限があるということです。スマートフォンのテザリングやモバイルルーターも、5.2GHz帯は屋外では使えません(屋内のみ)。

なお、5.3GHz帯と5.6GHz帯は気象レーダーなどと周波数を共用しているため、DFSという機能の搭載が必須とされています。この機能が働くと、レーダーを検出したタイミングで自動的にチャンネルが切り替わり、一時的に通信が途切れることがあります。「5GHzで急に切れることがある」という現象の正体は、これであることが少なくありません。

チャンネルの重なりを避ける

集合住宅では、近隣のルーターと同じチャンネルを使ってしまい、混み合って遅くなることがあります。

2.4GHz帯は13のチャンネルに分かれていますが、1つのチャンネルは前後の帯域も使うため、隣り合う番号どうしは干渉します。実質的に重ならずに使えるのは1・6・11の3つ程度です。近所と重なっていそうなら、この3つの中から空いていそうな番号を選びます。

5GHz帯はチャンネル番号があらかじめ離して割り当てられている(36、40、44…)ため、そもそも重なりにくいのが利点です。自動設定でうまくいかないときだけ、ルーターの設定画面から手動で変えてみましょう。

置き場所を変えても届かないときは

ここまで試しても電波が届かない部屋がある場合は、機器を足す段階です。

中継機やメッシュWi-Fiで電波の届く範囲そのものを広げる方法があります。ただし中継機は「置く場所」で効果が大きく変わり、機種選びにもコツがあるので、詳しくはWi-Fi中継機の選び方と置き場所を参考にしてください。

また、そもそも置き場所以外に原因があるケースもあります。回線側の混雑、ルーターの寿命、接続台数の多さ、設定の問題——といった切り分けについてはWi-Fiが繋がらない・遅い原因は?にまとめてありますので、あわせてご覧ください。

順番としては「置き場所の見直し → 帯域とチャンネルの調整 → 機器の追加」。お金をかけずに済む順に試すのが、遠回りに見えていちばん早い道です。

設置場所についての投稿

実際に置き場所を変えて改善した、という声もあります。※いずれも数年前の投稿で、機器やアプリの状況は現在と異なる場合があります。

まとめ

Wi-Fiルーターの置き場所は、「避けるもの」と「満たす条件」の2つで決まります

避けるのは、扉付きの収納・水槽・金属ラック・鏡・電子レンジのそば・床への直置き。満たしたいのは、家の中心寄り・床から1〜2mの高さ・まわりに物がないという3条件です。

そのうえで、アンテナは「軸に対して垂直に飛ぶ」ことを踏まえて向きを調整し、距離があるなら2.4GHz帯、近いなら5GHz帯と使い分ける。ここまでを試してから、中継機やメッシュWi-Fiを検討すれば無駄がありません。

新しい機器を買う前に、まずは今あるルーターを1メートル動かしてみてください。それだけで解決してしまうことも、決して珍しくありません。

ネット回線の先生ネット回線の先生

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